2008年3月8日土曜日

杉森久英「天才と狂人の間」&宇宙の帝王 岩野泡鳴

天才と狂人の間―島田清次郎の生涯 (河出文庫)
杉森 久英
河出書房新社
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評伝の大物杉森久英の出世作 今読んでる 奇人島田清次郎の伝記 中二病押尾語録、ああいう大言壮語がポピュラーになったのは多分大正時代 島田はその先駆けと思っています

小中学校では神童といわれていたこともあり、島田はこの頃から自分のことを天才だと信じるようになる。ノートには「清次郎よ、汝は帝王者である。全世界は汝の前に慴伏するであろう!」「人類の征服者、島田清次郎を見よ!」などと書きつけていた。
サイコドクターぶらり旅より

精神界の帝王 島田清次郎 on the Net

青空文庫 島田清次郎

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宇宙の帝王といえば岩野泡鳴

岩野泡鳴は北海中学に出向いて五百人の生徒の前で演説をした。彼の話は自ら伊藤博文の死からはじまった。わが国の将来の戦争と発展の根本性質を彼は論じ、欧米諸国の偽文明を排し、実力を尊ぶ野蛮主義が必要であることを語った。また彼は、伊藤博文を批評して、その野蛮主義を押し通す勇気が足らなかった、とした。そして彼は結論として、生々、強烈、威力、悲痛、自己中心の刹那主義の思想を語った。それが二時間も続いた。
 泡鳴は興奮して「豊太閤も、伊藤公も、現代の発展的思想においては全く僕に属しているのだ - 乃ち、僕自身のものである」と叫んだ。これこそが自分の思想の中心的な発言であると思ったのに、どうしたことか、五百人の生徒は申し合わせたように一斉にどっと笑った。
 泡鳴は調子が狂った。彼は口をつぐんで、しばらく聴衆を睨みつけていたが、やがて、「おれは宇宙の帝王だ!否、宇宙その物だ!笑うとはなんだ」と怒鳴った。すると満堂の生徒たちがまたどっと笑い崩れた。
 泡鳴はすっかり立腹して、学校の教員たちがあやまって押しとめるのも構わず、そこから走り出して下宿に帰った。愛用の鳥打帽は学校に忘れて来た。
 安部雨之舎がその帽子を持って後から追いかけて来た。そこにはしも江が病院から遊びに来て繕いものをしていた。しも江は泡鳴に言った。
「演説で威張りすぎて、自分の物を忘れて来たんじゃ」
「何だ!帰れ!てめえのような者はいたって邪魔だ!」
「帰るとも!反物一つ買えんくせに」としも江が言い、また争いになった。泡鳴はまた言った。
「おれは神も同然だ!宇宙の帝王だ!宇宙そのものだ!それが分からないような女なら、おれの女房でない!妾でもない、色女でもない!無資格、無価値の色気違いめ、下らない男にだまされてばかりいやがって、いよいよ実際になりゃア、棄てられてばかりいやがる!」 via

伊藤整の名著 日本文壇史〈11〉自然主義の勃興期より 価値破壊と英雄主義の興隆期 明治末期から大正時代はアツい若者跋扈の時代 

泡鳴は演説ばっかしてたイメージあるね いつだったか 散歩の途中で急にムラムラしてきて、たまらず近所の中学校にあがりこみ体育館に生徒を召集 そのまま数時間演説したって話 あんまり面白いんで嘘だと思うけど
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伊藤 整
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5 明治40年の文壇



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